季節が冬に向かっていくと、早く着たくなる洋服があります。
そのひとつが、この記事でご紹介するフランネルのオーダースーツです。
その他にも、カシミヤのジャケットやセーター、ツイードのジャケット、コーデュロイのスーツなど、秋冬にしか着ないアイテムたちがあります。
今回は、フランネルのオーダースーツでどのように冬の装いを楽しむか、私の考えをお伝えさせていただきます。
FABRIC:FOX BROTHERS CLASSIC FLANNEL
お客様ともよく話題になりますが、やっぱり秋冬は、いろいろな素材があって、オーダーするのが楽しいです。
個人的には、夏も好きですが、もう少し秋冬の期間が長くなって欲しいですね。
オシャレには季節感が大切だということをよく言われますが、メンズファッションも野菜や魚のように旬を楽しみたいものです。
FABRIC:DRAPERS 100%WOOL FLANNEL
スーツをオーダーしたことのある皆様は、見たり触ったりしたことはあるかと思いますが、平織りや綾織りで仕上げた生地を縮絨し、起毛加工を施した生地で、ふんわりと柔らかく膨らみがあり、見るだけで暖かさが分かる冬らしい素材です。
フランネルは縮絨によって目が詰まった生地なので、耐久性は高く、大切に着ていただければ10年20年と長く着ることが出来る素材ですが、特に湿った状態での擦れには弱いので、股ずれや摩擦抵抗の高い素材の椅子には注意が必要です。
フランネルスーツは、厚みのある起毛した生地による暖かさと、ソフトで弾力のある風合いによる着心地の良さが特徴で、とてもクラシックですが、リラックスした雰囲気も感じられるスーツです。
ネクタイを締めてクラシックに装うビジネスシーンはもちろん、ニットやカットソーなどとコーディネートした大人のカジュアルスタイルでも格好良く決まり、着ているだけで季節感を出すことが出来るので、冬の装いが楽しくなるメンズファッションの万能アイテムでございます。
また、起毛されていることによって、光沢や発色が抑えられ、色が柔らかく上品になりますので、いろいろな色柄を選びやすいのも魅力であり、実際に多種多彩な生地でオーダーいただいております。
FABRIC:CACCIOPPOLI 100%WOOL FLANNEL
フランネルスーツは、多くの皆様に着て欲しい冬の代表的なアイテムですが、リネンスーツやコットンスーツと同じように、セレクトショップや百貨店などのメンズスーツ売り場を見渡しても、既製品で販売されている数は限られていますので、理想の色柄やデザイン、サイズを求めるのであれば必然的にオーダーで仕立てるのが一番良いと思います。
お好みのデザインや仕様を選ぶことが出来るのはもちろん、フランネルの生地はざっと数えて700~800種類ほどありますので、豊富な選択肢の中からご予算に応じて、サイズの合った自分だけのスーツをオーダーいただけます。
また、フランネルの生地は耐久性が高いので、多少コストが掛かっても、身体に合った良いものをオーダーして長く着ていただくことが、体にも心にもお財布にも良いと思いますし、エイジングも楽しめます。
作り手側からしても、生地が厚手で変なシワが出にくいので、フィッティングし易く、また縫製面からも立体的に形を整えやすいので、格好良い仕上がりが保証されています。
FABRIC:FOX BROTHERS CLASSIC FLANNEL
フランネルは、ヨーロッパのミルやマーチャントであれば、どこでも取り扱っている素材ですが、COLLABORATION STYLEにおきまして、人気と実績のある間違いのない生地をご紹介させていただきます。
フランネルと言えば、英国のフォックスブラザーズが有名ですが、COLLABORATION STYLEでは、フランネルでもロロピアーナが一番人気です。
ウール&カシミヤで織られた生地は、重さが320g/mとフランネルとしては重たくない部類ですが、ソフトで膨らみのある風合いの中にしっかりと芯があり、柔らかすぎないのが特徴で、きれいな発色の色柄が圧倒的に揃っております。
リッチ感もありながら、いやらしさが無い、正にクワイエットラグジュアリーを表現した生地でございます。
ロロピアーナのライバルらしく、カシミヤを主力としたラグジュアリーな生地を得意とするピアチェンツァのフランネルも、ウール&カシミヤで織られた290g/mの生地で、名前にNOBLE(ノーブル)と付けているだけあって、発色がきれいで上品な色柄が揃っております。
生地のタッチは、ロロピアーナよりも少し薄く柔らかい感じで、色柄はインパクトのあるものが多いです。
フランネルは、趣味性の高い生地なので、様々なメーカーが、それぞれの個性を出していて生地を見ているだけでも楽しいですね。
「フランネル」は、1950年頃までフォックスブラザーズが商標として保有していただけあって、クラシックな洋服が好みのお店やお客様が大好きな生地で、英国のフランネルの代名詞として長年愛され続けている定番のコレクションでございます。
英国生地はしっかりとして硬めな風合いをイメージしますが、370~430/mの目付で織られたフランネルは、むしろイタリア製よりも、ふんわりとした厚みと弾力があり、よりエイジングが楽しめます。
ウィンザー公、ウィンストン・チャーチル、ケーリー・グラントなどが愛した生地としても有名です。
フランネルの生地は、他にもたくさんございますので、スーツをオーダーされる際は、お好みの風合いや色柄をぜひじっくりと見つけてください。
もちろん、お客様のイメージやご要望に合わせた生地選びのサポートはお任せください。
今までお客様にオーダーいただいきました様々なフランネルスーツを例に、色や着用シーン、コーディネートについて、ご紹介いたします。ぜひ、皆様がオーダーされる際のご参考にしてみてください。
まずは、LORO PIANAのWOOL AND CASHMERE FLANNELでオーダーいただいたスーツを3着ご紹介します。
フランネルスーツの王道の色と言えば、ミディアムグレーの無地。
フランネルスーツと言えば、まず思い浮かぶ色ですね。ロロピアーナならではのミディアムグレーは、見れば見るほど、惚れ惚れする色でございます。こちらのお客様は、毎シーズン、スーツやジャケットをオーダーされておりますが、その中でも、このスーツはとても評価が高い1着でございます。
ビジネスシーンでは、ミディアムグレーのフランネルに合わせるシャツは、白が鉄板ですね。
肩幅があり、肩の筋肉もガッチリとされていますので、いかつく見えないように、袖付けはマニカ・カミーチャ(シャツ袖)で、仕上げております。
ロロピアーナらしいエレガントなライトグレーのチョークストライプ。
ロロピアーナが得意とするライトグレーやグレージュ、ライトベージュといったニュアンスカラーは、とても上品できれいな色でございます。起毛によって、派手さが軽減されているので、ビジネスシーンで着ていただいても全く問題ありませんので、ぜひもっと多くの皆様に着て欲しいです。
こちらのお客様は、シーズン性の高いスポーツをされていて、オンシーズンには、腕や胸の筋肉が大きくなるため、ゆとりを作りながら、立体的に仕上げております。
ミディアムグレーのファンシーチェックのスリーピーススーツ。
英国製のフランネルでは、ほとんど見かけない、イタリア製ならではの柔らかい雰囲気の柄でございます。無地やストライプのスーツを揃えた後は、ファンシーなチェックも良いですね。
こちらのお客様は、秋冬物はもちろんのこと、春夏物のスーツも全てスリーピースでオーダーされる、クラシックもカジュアルも大好きな紳士でございます。クラシックなスリーピーススーツとファンシーなチェック柄の組み合わせは、経験値が豊富なお客様ならではです。
続いては、PIACENZAのNOBLE FRANNELでオーダーいただいたスーツを2着ご紹介します。
赤みがかったベージュのダブルスーツ。
メンズスーツの既製品では、まず見かけないオーダーならではのきれいな色で、とてもエレガントなスーツに仕上がっております。少しハードルが高い色かもしれませんが、きれいな色が好きなお客様には、目が留まる色ですね。
フランネルスーツは、ダブルでオーダーされるお客様が比較的多いです。こちらは、ライトグレーやミディアムグレーのパンツや、オフホワイトやミディアムグレーのニットなどと合わせて、ジャケットとして着ていただいても格好良いですね。
インパクトのあるホワイトフランネルのスーツ。
こちらも、オーダーならではの生地のセレクトです。映画で見るようなスーツでございます。
ベーシックなスーツやジャケットは一通りお持ちのお客様で、最近は少しずつ個性的なアイテムをオーダーされています。
スーツとしてのオーダーですが、ジャケットとパンツをそれぞれ単品使いされる予定です。
昔のヨーロッパでは、ホワイトフランネルのパンツは、スポーツウェアとして定番で使用されていたようですが、現代では、ネイビーブレザーやレザージャケットに合わせることが多いと思います。
続いては、FOX BROTHERSのCLASSIC FLANNELでオーダーいただいたスーツを2着ご紹介いたします。
ミディアムグレーの無地と同様にとても人気の高い、チャコールグレーのチョークストライプです。
シャツやパンツをオーダーされることが多いお客様ですが、こちらは、COLLABORATION STYLEで初めてオーダーいただいたスーツでございます。
チャコールグレーのチョークストライプもタイドアップの時は、白シャツがベストです。
清潔感があって、威厳が出ますね。
お客様のご要望で、ジャケットのフロントダーツを無くして、ラペル(衿)も特別に型紙を作成したオリジナルの衿型で仕上げました。
このようなイレギュラーな仕様も可能な限り対応しております。
そして、続いてのお客様もチャコールグレーのチョークストライプです。
この柄は、生地メーカーを問わずとても人気がありますね。やっぱり格好良いです!
関西からお越しいただいて、定期的にスーツやジャケットをオーダーされるお客様で、いつも生地のイメージを決めてご来店されます。このスーツをオーダーする時は、フォックスブラザーズのフランネルと決めてのご来店でした。
フォックスブラザーズのフランネルは、指名買いのある数少ない生地のひとつです。
モックネックのニットとのコーディネートもとても良い感じです。
フランネルのスーツは、ニットとの相性も抜群です。
続いては、CACCIOPPOLI(カチョッポリ)から、グレーのグレンチェックにブルーのオーバーペーンが入ったフランネルらしい柄でオーダーいただいたダブルスーツです。
グレージュのモックネックのニットとのコーディネートが良い雰囲気ですね。
昔、怪我をされた影響で、フィッティングが難しい体型のお客様ですが、写真ではその影響が全く分からないくらいきれいなスーツに仕上がっております。
体型を上手く隠しながら、格好良く仕上げるのもオーダーの良い所ですね。お客様にもとても喜んでいただいております。
今まで30年余りの紳士服業界人生の中で、FOX BROTHERS、HARRISONS、DRAPERS、LORO PIANAなどのフランネル生地でスーツをオーダーしてきましたが、現在、現役で活躍しているスーツは2着、どちらも生地は、LORO PIANAのWOOL AND CASHMERE FLANNELSでございます。
クラシックで正統派のチャコールグレーのチョークストライプ
私もチャコールグレーのチョークストライプは、もちろん持っております。
だから、COLLABORATION STYLEでは、オーダーが多いのかもしれません。
白シャツと表情のある無地のネクタイでコーディネートしました。
毛足があるので、ストライプが悪目立ちせず、着るだけで存在感が有り、格好良くしてくれるので、ヘビーユースしたくなる大人のスーツでございます。
ダークブラウンのグレンチェック
グレンチェックもクラシックな柄ですが、ブラウンを選ぶことで、少しリラックスしたラグジュアリー感が出ていると思います。
白シャツに柄が大きめなペイズリーのネクタイとコーディネートしました。スーツの生地が落ち着いていますので、少しインパクトのあるネクタイでも相性が良いです。
地の色に沈んだ目立たないグレンチェックは、かなり格好良く、ご来店いただくお客様にもご好評をいただいております。
タートルネックのニットやスエードの靴との相性も抜群です!
チャコールグレーのタートルニットを合わせてみましたが、明るいオフホワイトでも格好良いですね。
日中は、タイドアップして仕事をこなし、夜はニットに着替えてレストランへなんて素敵ですね。
以上、お客様と私のオーダーしたいろいろなフランネルスーツで、色やコーディネートについて、ご覧いただきましたが、皆様のご参考になりましたでしょうか。
フランネルスーツは、色柄も豊富で、ビジネスでもカジュアルでもコーディネートを楽しめて、冬の装いが本当に楽しくなるアイテムです。
私は、たくさんの生地や写真を見ながらこのコラムを書いているので、早速、次のフランネルスーツが欲しくなってしまいました。
実はFOX BROTHERSやHARRISONSの生地は、数点ショップにストックしておりまして、今後、もしお客様から選ばれなければ、私がオーダーしてしまいますが、恐らくこのコラムをご覧のお客様に選んでいただけるのではないかと思っております。
現在のバンチブックには収録されていない、デッドストックもございます。
フランネルだと暑いというご意見もありますが、同じ起毛素材で少し薄い、ライトフランネル・サキソニー・ミルドなどの生地もご用意しておりますので、ご来店の際は併せてご覧いただけたらと思います。
ということで、今回もコラムをご覧いただきましてありがとうございます。
ビジネススタイルのカジュアル化が進み、ビジネスシーンにおきましては、以前よりもフランネルスーツへの抵抗感も無くなっていることと思いますので、ぜひ皆様の冬の装いを楽しむアイテムとしてご興味をお持ちいただけましたら嬉しいです。
ジャージー生地のセットアップには無い、フランネルスーツの心地良さや奥深さを余裕のある大人にこそ知っていただけたら嬉しいです。
ご用意している生地の種類や価格等のご質問は、お電話でもメールでも、お気軽にお問い合わせくださいませ。
COLLABORATION STYLE 上原祥意