今回は、COLLABORATION STYLEでも、春夏シーズンのクラシックなスーツスタイルの定番で人気のオーダーリネンスーツについて、お客様にオーダーいただきました素敵なスーツをご覧いただきながら、人気のスタイルや生地などをご紹介させていただきます。
ぜひ、皆様のご参考にしていただけましたら幸いです。
そもそもリネンスーツは、既製品を含めた「メンズスーツ」のカテゴリーでは、シェアはとても低いと思いますが、「オーダースーツ」のというカテゴリーでは、結構なシェアがあるのではないでしょうか。少なくとも、私がお会いしてきたリネンのスーツをお召しになられている方々はオーダーで仕立てている方がほとんでございます。きちんと統計を取った訳ではありませんが...
では、どういったお客様がリネンのスーツをオーダーいただいているのか、当店のお客様を考えてみると、
仕事でも着られている方々は、
・ドレスコードが無い公務員の方
・弁護士・会計士・税理士など士業の方
・個人事業主や経営者の方
などなど、お仕事でのスタイルが自由な方々が多いです。
また、一方で、医者・警察官・自衛隊など、普段のお仕事ではスーツ自体を着る機会は少ないですが、スーツが好きで趣味で着られている方々も、たくさんいらっしゃいます。
ただ、この数年のビジネススタイルの急速な変化で、そもそもスーツを着なくてもよい職場が増えていますので、逆にスーツを着る場合の素材や色柄などが自由になり、リネンスーツも着ていきやすい環境になっていると思います。
リネンスーツの何が良くて、何に魅かれるのか?
ウールやコットンのスーツとは違う、様々な特徴や魅力をご紹介させていただきます。
まず、機能的なメリットとしましては、汗などの水分をよく吸って、素早く乾燥させる性質が強く(吸水性と速乾性に優れた)サラリとした心地良い肌触りに抗菌効果までプラスされた、湿度の高い日本の夏にもとても相性の良いスーツだと思います。ただし、リネンはベビーウエイトの生地も多いので、生地によっては決して涼しくはありません。
逆にデメリットとしましては、シワになりやすいことがあげられると思いますが、シワもリネンスーツの魅力のひとつで、リネン愛好家の方々には全く気にしていないばかりか、むしろ魅力を感じる部分でございます。リネンスーツほどシワが似合う、むしろ格好良いスーツは他にありませんね。
また、繊維が強く丈夫なため、長く着ていただけますので、シワや摩擦による色褪せ、アタリ、しみなどのエイジングも魅力でございます。
とても良い感じにエイジングされたスーツ
シワ、色褪せ、しみなどは、どこか年齢を重ねた大人の男の魅力と重なって思えるのは私だけでしょうか。
リネンスーツは、ウール等のビジネススーツとは少し距離を置いた、大人の余裕・贅沢感・リラックス・粋を感じる存在でございます。
必ずしも必要ではないものこそ、こだわりがあり、個性が引き立ち、魅力を感じるものだと思います。
メンズウェアの中でも長い歴史のあるリネンスーツですが、既製品で販売されている数は圧倒的に少ない為、理想の色柄やデザイン、サイズを求めるのであれば必然的にオーダーで仕立てるのが一番良いと思います。
サイジングはもちろん、生地やデザインの選択肢も圧倒的に豊富なので、理想のリネンスーツを求めるにはオーダーが近道で、簡単で、最善です。
オーダースーツ屋の私が言うのも何ですが、欲しいリネンスーツを既製品で見つける方が、余程、至難の業だと思います。
リネンに限らずですが、オーダーで仕立てる方が良い理由のひとつは、お好みのスタイルやデザインを選べて、かつ最適なサイズで自分のオリジナルのスーツが作れることです。
COLLABORATION STYLEでご用意しておりますオーダースーツのスタイルとデザインは、リネンスーツでも全てご使用いただけます。
既製服では、圧倒的に数が少ないスリーピースやダブルブレステッド、またオーダーでは人気のあるベルトレスのパンツとの組み合わせなども、何の問題もなくお求めいただけます。
ダブルブレステッドのジャケットにベルトレスのパンツ
チェンジポケット付きのジャケット
また、オーダーで仕立てる方が良いもう一つの大きな理由は、何といっても生地の種類の豊富さです。現在、COLLABORATION STYLEでは、100%リネンのスーツ生地だけで、ざっと500以上の種類をご用意しております。
英国やイタリアを中心に、長い間ずっと作り続けられている定番の生地から、シーズン限定の新しい素材や色柄まで、生地を選ぶ楽しみは絶えないと思います。着る季節や用途、イメージ等に応じて、色や柄、素材感などの選択肢も多く、より理想のリネンスーツをオーダーいただけます。
ここからは、お客様にオーダーいただきましたリネンスーツをご参考にご覧いただきながらCOLLABORATION STYLEで人気がある、オーダースーツに最適なリネン生地をご紹介させていただきます。
恐らく多くの方々が、リネンスーツとしてまず思い浮かべるのは、アイリッシュリネンでは無いでしょうか。
今やアイリッシュリネンという素材は、ブランド化され、メンズウェアでは多くの商品に使用されている代表的なリネンでございます。
メンズスーツのオーダーで使用されるような高品質なリネンの原材料のフラックス(亜麻)の生産地は、フランスやベルギーですが、そのフラックスの繊維から作られた糸を使い、アイルランドにあるミル(織物工場)で織られたリネンをアイリッシュリネンと言います。
アイリッシュリネンを使用してオーダーするスーツの良さは、ハードでしっかりとした生地による構築的なシルエットと、時間を掛けながらハードな生地が自分の身体に馴染んでいくエイジングが楽しめることではないでしょうか。
バリっとした糊が効いていて、ハードタッチでコシのあるヘビーウエイトの生地が多いので、下手な仕立てですと立体感も無く、ただ重たいだけのスーツになってしまいますが、COLLABORATION STYLEでは、硬く張りのある生地の特徴を活かしながらも、滑らかな曲線でメリハリを持たせ、ソフトな毛芯を使用した柔らかく軽い仕立てのスーツに仕上げております。
この仕立ての良さも、後々のエイジングした時のクオリティにつながってまいります。
そんなアイリッシュリネンの中から、COLLABORATION STYLEで人気のW.BILL(ダブリュ・ビル)とSPENCE BRYSON(スペンス・ブライソン)をご紹介させていただきます。
W.BILL(ダブリュ・ビル)
W.BILLは、ハリソンズグループのコットンやリネン、ツイード等を扱うマーチャントブランドでございます。
W.BILLのアイリッシュリネンは、380g/mのTROPICAL(ベーシックな平織り)で、無地のみ33色ご用意しております
W.BILLのインディゴのようなブルーで仕立てたスーツ
丸く身体に沿うような立体感があり、380g/mのヘビーウエイトの生地ながら見るからに重さを感じさせないスーツに仕上がっております。
COLLABORATION STYLEとしましては、肩が張り、カクカクと角張った直線的なスーツは好みではありませんので、構築的でありながらも柔らかく軽いスーツをお作りしております。生地は硬くても、決してスーツは硬くありません。
バックスタイルもナチュラルなショルダーラインで、ストレスなく理想的な雰囲気です。
W.BILLの黒のリネンで仕立てたダブルブレステッドスーツ
ハリコシによる構築的なシルエットですが、見た目よりも軽い着心地に仕上がっております。リネンのスーツは、ダブルもとても雰囲気良く仕上がります。このままブレザーとして着ていただいても良い感じです。
リゾートやパーティーでの装いに白のアイリッシュリネンのダブルブレステッドスーツ
白やオフホワイト、アイボリーのような色が多いのもリネンスーツならではですね。
SPENCE BRYSON(スペンス・ブライソン)
続きましては、アイリッシュリネンの最も有名なミル・SPENCE BRYSONをご紹介させていただきます。
SPENCE BRYSONで織られた生地は、英国、イタリア、日本など、様々なマーチャントで使用されておりまして、実はW.BILLのTROPICALの生地もSPENCE BRYSON製でございます。
ミルだけに様々なクオリティの生地がございます。
その中でも最も人気が高く、カラーバリエーションが豊富な生地が、370g/mで密に織り上げられたTROPICALでございます。
最早、「アイリッシュリネンと言えば、SPENCE BRYSONのTROPICAL」と言っても過言では無いくらいイメージが浸透していると思います。日本においても、長年に渡り、最も多く使われていて、売れているアイリッシュリネンだと思います。
10年20年と長く着ていただける丈夫な生地なので、革靴などと同様にシワや色の変化などのエイジングを楽しみながら着ていただけるスーツでございます。
W.BILLもSPENCE BRYSONも、一部のクオリティを除いて日本の真夏に着るのは結構しんどいと思いますので、多くのお客様には、春先や秋口~冬の手前まで着られることをイメージしてオーダーいただいております。
SPENCE BRYSONのTROPICALのグリーンとブラックが混ざったような色で仕立てたスーツ
また、TROPICAL以外のクオリティとしましては、以下の4種類の素材をご用意しております。
LISMORE 370g/mのTROPICALよりも、軽くて薄い280g/mのTROPICALです
KILDARE ザックリと目を粗くして織られた350g/mのメッシュ調の生地です
KILDAREのネイビーで仕立てたスーツ
TYRONE KILDAREよりも目が詰まり、厚みのある380g/mのヘビーウェイトの生地です
GLIN 300g/mの中肉でソフトなヘリンボン
アイリッシュリネンでスーツをオーダーしようとご検討されている方は、W.BILLもSPENCE BRYSONもクオリティはほとんど変わらず、価格の違いもほとんどありませんので、両ブランドの生地をじっくりとご覧いただき、お好きな色を見つけていただけたら良いと思います。
実は、リネンはPIECE DYED(ピースダイ)と言われる反染めの生地が多いので、ロットによって色が変わることがしばしば有る為、色は一期一会だったりもします。
続きまして、イタリアンリネンをご紹介させていただきます。
イタリアンリネンもアイリッシュリネンと同様に、フランスやベルギーで生産されたフラックスから作られたリネンの糸を使用し、イタリアのミル(織物工場)で織った生地でございます。
イタリアのリネンは、たくさんのミルやマーチャントで、様々なクオリティの生地が作られております。
その中でも、COLLABORATION STYLEでは、特にクアローナのSOLBIATI(ソルビアッティ)とナポリのCACCIOPPOLI(カチョッポリ)のリネンが人気でございます。
SOLBIATI(ソルビアッティ)
SOLBIATIは、イタリアを代表する高級リネンメーカーで、とても洗練された様々なクオリティのリネンを色柄多彩にご用意しております。
100%リネンのスーツで人気の高い生地を収録したバンチブックは、PERICLE・ART DU LIN・DRESANO-PEGASO
イタリアらしく鮮やかな色柄が豊富に揃っております。
こちらは、PEGASOのコレクションから、340g/mのグレーのヘリンボンで仕立てたスーツ
写真で見るだけでも、アイリッシュリネンのスーツとは違い、柔らかい雰囲気のスーツに仕上がっております。
こちらも同じく、PEGASOのブラウンのヘリンボンで仕立てたスーツ
既にシワの良い味が出ており、この力の抜けた感じがとても格好良いですね
また、SOLBIATIには、最高級のリネン生地コレクション・ART DU LIN(アート・デュ・リン)がございます。
細番手の最高級のリネンの3Ply(スリープライ・3本撚り)の糸を使用し、TROPICAL(410~420g/m)とTWILL(530g/m)で織り上げた、他には無い、ハイクオリティでラグジュアリーな生地でございます。
SOLBIATI ART DU LIN TROPICAL
SOLBIATI ART DU LIN TWILL
実は、私の次回のリネンスーツは、このART DU LINの生地で作ろうと考えております。
CACCIOPPOLI(カチョッポリ)
CACCIOPPOLIは、南イタリアのナポリらしい色柄のジャケットやシャツ生地のファンが多いマーチャントで、コットンやリネンの素材も人気がございます。
コットンとリネンのバンチブックはとてもバリエーションが豊富で、リネンスーツでは、330g/mのTROPICAL、350g/mのCANVAS、300g/mのLINEN DENIMなどが人気です。
TROPICAL
CANVAS
LINEN DENIM
こちらは、私がCACCIOPPOLIの330g/mの100%リネンのTROPICALで2019年に仕立てましたスーツです。
白のリネンシャツとコーディネートして明るい陽射しの下で、焼けた肌に着ていただけるとかなり格好良いと思います。私ももう少し日焼けした方が良いですね!
袖や身頃にシワが入り、くったりとした雰囲気がとても良い感じです。
写真では分かりませんが、一部色が褪せてきている箇所もあり、リネンならではのエイジングを楽しんでおります。
こちらもCACCIOPPOLIの同じリネンのコレクションからお客様にオーダーいただきましたナチュラルなサンドベージュのスーツでございます。
昔の写真で見るような夏の理想的なリネンスーツのイメージに近く、とても涼しげなスーツに仕上がっております。また、スーツとしてだけではなく、ジャケットとしても、パンツとしても使い易い生地でございます。
日本の夏でも着ることが出来るソフトで薄く軽いリネンスーツをイメージされているお客様は、アイリッシュリネンよりは、300~330g/mくらいの目付で織られたイタリアンリネンのTROPICALでオーダーされる方が断然涼しくてお好みに合うと思います。
続きまして、フレンチリネンの生地をご紹介させていただきます。
フラックスの生産地として圧倒的なシェアを誇るフランスですが、日本でフレンチリネンのスーツやジャケット生地を入手できるミルやマーチャントは少なく、COLLABORATION STYLEで取り扱いのあるマーチャントでは、2023年春に本格的に日本に上陸しましたMaison Hellard(メゾン・エラール)のみでございます。
Maison Hellard(メゾン・エラール)
このMaison Hellardのフレンチリネンは、フランスのノルマンディー地方の最高級のリネンを使用し、イタリアの熟練した職人達が織った生地でございます。
Maison Hellardのリネンは、イタリア製だけにイタリアンリネンに近いですが、SOLBIATIやCACCIOPPOLIとも少し違い、ソフトで滑り感のある風合いや落ち着いたクラシックな色柄が、とても新鮮で、リネン愛好家が大好物のコレクションが揃っております。
リネンのような、一部の生地メーカーでしか作られない大昔からある素材に、新しいマーチャントが登場するなんて思ってもみなかったので、日本上陸当初は、かなり話題となっておりました。
しっとりとして軽いタッチの生地ですので、春~夏~秋と着られるリネンスーツをお考えのお客様にはお薦めでございます。
定番のHeures Bleues(ウールブルー)のコレクションは、360g/mのTWILL(綾織り)と330g/mのTROPICAL(平織り)で構成されております。
TWILLの生地は、ファンシーなチェック柄とヘリンボンで27色ご用意しております。
TWILLなので少し生地に厚みはありますが、とてもソフトな風合いです。チェックやヘリンボン柄は、クラシックな色柄が揃っていて、ジャケットでもスーツでも人気がございます。
こちらのスーツは、生地に一目ぼれしたお客様にオーダーいただきました。淡いブラウンベースにダークブラウンとグリーンのダブルウインドペーンが入った生地は、上級者のカジュアルスーツですね。
こちらのスーツは、ブラウンのシャークスキンにシンプルなグリーンのウインドペーンが入った生地でオーダーいただきました。
Maison Hellardは、フランスの生地マーチャントですが、生地の色柄は、完全にイタリアですね。
TROPICALの生地は、無地で21色ご用意しております。イタリアンリネンとはまた違った柔らかさと膨らみ感のある優しい風合いでございます。
こちらは、Ardoise(アルドワーズ)と名付けられた少しグリーンがかったグレーの生地でオーダーいただきましたスーツです。パリの雰囲気です。
丸みのある立体感と優しく入ったシワがとても良い感じです。
そして、もちろん私も、Maison Hellardの生地でスーツをオーダーしております!
選んだ生地は、Bleu profond(深い青)というネイビーです。今までオーダーしたリネンのスーツは、ベージュからブラウン系の生地が多かったので、初めてネイビーでオーダーしてみました。
柔らかく軽い生地ですので、着始めからとても着心地の良いスーツに仕上がっております。
ノータイスタイルも、リラックス感や大人の余裕感が出て、とても良い感じにスタイリングが出来ますね。
インナーには、100%リネンやコットン&リネンのシャツが、とても相性が良いです!
ということで、今回のコラムは、「オーダーで仕立てる理想のリネンスーツ」と題しまして、定番で人気のリネンスーツについて、たくさんのリネン生地とその生地を使ったスーツをご覧いただき、様々な特徴や魅力をご紹介させていただきました。
ビジネススタイルのカジュアル化が進み、ビジネスシーンにおきましては以前よりもリネンスーツへの抵抗感も小さくなっていることと思いますので、ぜひ皆様のスーツスタイルの選択肢の一つとしてご検討いただけましたら幸いです。
ジャージー生地のセットアップとは真逆のスーツですが、余裕のある大人にこそ、ぜひリネンスーツの心地良さや奥深さを知っていただけたら嬉しいですね。
もちろん、私・上原が、お客様それぞれに合わせたご提案とサポートをさせていただきますので、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
COLLABORATION STYLE 上原祥意