オーダースーツのいろいろ

現在、東京には、多くのオーダースーツショップやテーラーと言われるお店があります。
お店(ショップ)だけではなく、様々な高級ブランドショップでもオーダースーツを展開しています。また、いわゆる大手百貨店をはじめ紳士服量販店やアパレルメーカーも続々とオーダースーツを拡大しておりますし、お店を持たずに訪問販売等でオーダースーツを販売している方々も沢山いらっしゃいます。

特にCOLLABORATION STYLEがある東京・銀座やファッションブランドのショップが多い青山界隈、そしてビジネスパーソンが非常に多い新宿界隈などは、ものすごい数のオーダーショップやテーラーが存在します。

まさに、現在はブームのようにオーダースーツ業界が拡がっておりますが、それぞれのお店で作られるオーダースーツはどこもみんな同じようなものなのか???いったい何が違うのか???という疑問があると思います。
インターネットのお陰で、昔に比べると圧倒的に情報がありますが、いろいろな情報がありすぎて、一般のお客様には正直、オーダースーツは分かり難いと思います。

こちらのページでは、「オーダースーツのいろいろ」と題しまして、今日本で売られているオーダースーツの大まかな内容をご案内したいと思います。

19AW_COLUM_SUIT.jpg

まず、「オーダースーツ」や「スーツオーダー」という言葉は非常に広範囲を示していて、ひとことで「オーダースーツ」といっても実際はいろいろなオーダーが日本には存在します。

今でこそ、ヨーロッパでもメイド・トゥ・メジャー(パターンオーダー)というオーダーが増えてきましたが、本来、ヨーロッパでオーダーと言えば、日本で言うフルオーダー(ビスポーク)のことでございます。

現在、「オーダー」としていろいろなお店やブランドが使用している言葉を並べてみますと、パターンオーダー、イージーオーダー、サイズオーダー、パーソナルオーダー、セミオーダー、フルオーダー、ビスポーク、メイド・トゥ・メジャー、ス・ミズーラ、などなどいろいろな言葉(言い方)がございます。
正直、実際にオーダースーツを販売している私たちでさえきちんとした線引きは出来ていません。汗

なぜなら、そもそもこのような言葉に明確な定義が無いので、同じ言葉であっても、実際に行われていることは、それぞれのお店、それぞれのブランドによって異なっているからです。(同じようにパターンオーダーやフルオーダーと謳っているお店でも、オーダーの内容がそれぞれのお店で違うということです。)

そういうことなので、私も今まで何かオリジナルの良い言葉がないかと、いろいろと考えたこともございますが、これはなかなか良い言葉が無く、難しいですね。

なので、結論から言うと、実際にお店に行ってみて(または電話、メールなどで)聞いてみないことには、そのお店のオーダーシステムはわからないと思います。(身も蓋もありませんが...)

        

では、何を基準にそれぞれの言葉が使われているのかというのを考えてみますと
(オーダーの種類を分けている違いはどの部分かと考えてみますと)

縫製技術などの仕上がりのレベルは考えないとした場合に、おそらくお客様は、

1. オーダー可能なサイズの範囲

2. 可能な体型補正の範囲

3. 可能なデザインの選択肢

4. マシンメイドORハンドメイド

5. 仮縫いの有り無し

というような内容でオーダーの種類を分けているのではないかと思います。

恐らく、
・いろいろなことが出来るお店のオーダーがクオリティが高くて良いオーダーで、あまり調整や変更ができないお店のオーダーは良くない。

・いろいろ調整や変更が出来た方が良いモノが出来上がってくる。

・いろいろなことが出来るオーダーのほうが価格が高く、あまり調整や変更が出来ないオーダーは価格が低い。

などのイメージを持っていらっしゃるかと思います。

これは、当たっている部分もあれば必ずしもそうではない部分もあります。

ブランドショップのオーダーは、ブランドのデザインやブランドイメージなどを重視してあえていろいろなことをしないというオーダーが多いですが、必ずしも安くはありませんし(どちらかと言うと高価な場合が多い)、いろいろなデザイン、変わった形をなんでも受け付けているオーダーショップ(テーラー)でもリーズナブルな価格のお店もあります。

もちろん価格が高いものは、いろいろな意味でクオリティが高いのは間違いありません。

そのクオリティの高さがお客様にとって必要なクオリティの高さ、あるいはお客様が求めているクオリティの高さとは必ずしもイコールでないところがあります。
そこがイコールになるとお客様にとってもお店にとっても、いわゆるWIN・WINの関係になるのではないかと思います。
それだけ「オーダースーツ」と言っても種類が多いということです。

  

実際にお客様の求めているクオリティとお店のクオリティとがイコールになるようにするには、必ずしも上記のような分類でお店を選択するのは、正しいことではないと思いますので、私なりに簡単なオーダースーツショップのお話しをさせていただきたいと思います。

あまり他のお店や雑誌、まとめサイトなどでは触れられることのないお話しかもしれませんが、オーダーショップやオーダースーツを作られているお客様にはある程度当然のお話しだと思いますので、これからオーダーを考えているお客様やまだスーツをオーダーし始めたばかりのお客様、もっといろいろとオーダーを楽しみたいお客様などのご参考になれば幸いでございます。

    

今回は簡単に2つのお話しをさせていただきます。

・それぞれお店には得意、不得意がある。

オーダーショップ(テーラー)は何でもできるわけではありません。ブリティッシュが得意なお店もありますし、イタリア仕立てが得意なお店もあります。クラシックなスタイルが得意なお店もありますし、特殊なデザインを打ち出しているお店もあります。

要は、それぞれの守備範囲があります。

不得意なスーツ、不得意なスタイルでもレベルの高いお店は対応できると思います。しかし、得意なスーツ、得意なスタイルをオーダーしたほうが、圧倒的にクオリティの高い商品がオーダーできます。

・同じ「できる」でもレベルが違う→これが価格の違いになる

これは、料理でも同じことが言えると思います。
同じラーメン、カレー、チャーハン、パスタなんかでも違いますよね。

単に「できる」というレベルと「美味しい」というのは違います。オーダースーツやオーダーシャツも同じことが言えます。同じ形をリクエストしても「格好良いモノ」と「そうじゃないモノ」がお店によって出来上がってきます。

もちろん、ある一定レベルの美味しさをクリアすれば、あとはお客様の好みによって「良いモノ」「美味しいモノ」は違ってくると思います。

ミシュランで星が付いたり、食べログで高得点のレストランでも、お客様によっては好みが合わない場合があります。それと同じです。

    

以上のようなお話しから、

「何を自分の基準に持ってくるか。」「どんなスーツが欲しいのか。」ということを少しだけ考えていただければ、少しは求めているモノに対して近道が出来るような気がします。
今オーダーに慣れている皆様達は、失敗も含めいろいろな経験をされているので、その経験もオーダーの一部だと考えていただけたら幸いでございます。

「オーダー」という神様のような言葉が、多くの皆様に誤解を招いている部分も沢山あります。

全てのオーダーショップはオールマイティではないということです。

そこに面白さがあって奥が深いモノだと思います。

私は、そんな仕事だから楽しくできているんだと思います。

     

COLLABORATION STYLE  上原祥意