今回は、COLLABORATION STYLEのオーダーコートの中から、シンプルで着心地の良いラグランコートの特徴とこだわりのポイントをお伝えいたします。
ラグランコート(Raglan Coat)は、首の付け根部分から脇の下に向かって斜めに縫い付けられた袖(ラグランスリーブ)が特徴のオーバーコートです。チェスターコートやポロコートのようなセットインスリーブとは違い、腕の動きが楽で、軽くゆったりとした着心地や美しいドレープが特徴です。
ラグランコートの名前は、19世紀のイギリス軍人「ラグラン卿(Lord Raglan)」に由来しています。クリミア戦争で負傷したラグラン卿が、腕を動きやすくする為に工夫した袖のデザインが始まりとされ、それが現在のラグランスリーブに進化いたしました。
機能性とデザイン性を兼ね備えたシンプルなコートは、時代を超えて多くの人々に愛用され、現代でもビジネスからカジュアルまで幅広く着回せるコートとして人気があります。
メンズのコートの中でもラグランコートはシンプルなだけに、ブランドやテーラーごとに細かい仕様やデザインで、個性を出していると思います。
COLLABORATION STYLEのオーダーラグランコートは、技術力が高く信頼のおける工場と研究を重ねて作り上げました。そのデザインの特徴とこだわりのポイントをご説明いたします。
COLLABORATION STYLEでは、シングルラグランコートとダブルラグランコートをオーダーいただけます。
シングルラグランコートの衿は、バルカラー(バルマカーンカラー)です。レイダウンバルと呼ばれる、衿腰が低く、シャツのオープンカラーのような衿が寝た状態のデザインです。
日本では、ステンカラーと同じ意味で使われることが多い、スタンダップバルカラーと比べて、エレガントで上品なイメージの衿です。
フロントの仕様は、ボタンの見える「打ち抜き」とボタンを隠したクラシックな「比翼仕立て(フライフロント)」から選んでいただけます。
ボタンの数は、3個が標準ですが、4個に変更も可能です。
ダブルラグランコートの衿は、アルスターカラーです。アルスターカラーは、ポロコートで使われることの多い衿ですが、ラグランコートでは、リラックスした柔らかい雰囲気の衿に仕上げております。
ダブルブレストのフロントは、6個ボタンの2つ掛け(6×2)が基本仕様ですが、4個ボタンでも、ラップコートのようにボタン無しでもオーダー可能です。
フロントを4個ボタン(4×2)に変更してオーダーいただいたダブルラグランコート
シルエットは、シングル・ダブル共に、少しゆったりとした自然なAラインです。
大人が着てもきれいに見える、大き過ぎない程度にゆとりのあるリラックスしたシルエットに仕上げています。
ベルトで締めれば、きれいなドレープが出て、一気にエレガントな雰囲気になります。
シェイプが効いた後ろ姿も、良い雰囲気です。
袖口は、タブ付きが基本仕様ですが、タブを外してシンプルな筒袖でのオーダーも可能です。
腰ポケットは、手が入れやすく十分な深さのある箱ポケットが基本仕様です。
パッチ&フラップのポケットは、お客様からのリクエストでオーダーできるようになりました。
COLLABORATION STYLEのアイテムには、それぞれ基本の仕様がありますが、デザインの変更も可能な限り対応させていただいておりますので、お気軽にお問い合わせください。
ラグランスリーブには、主に3種類のデザインがあります。
1.ビンテージのバーバリーで有名な、ゆったりとしたリラックス感が特徴の、縫い目が脇の下にしか無い一枚袖
2.シルエットか作りやすく、構築的でフォーマル感があり、縫い目が袖の上部と脇の下2か所にある二枚袖
3.立体的で、袖の捻じれが少なく、より腕のカーブに添わせることが出来る、3か所に縫い目がある三枚袖
その中から、COLLABORATION STYLEのラグランコートは、エレガントな雰囲気を出せるように、すっきりとしたシルエットで、動きやすく、捻じれの少ない三枚袖を採用しました。
きれいなカーブで前振袖になっていますので、腕がとても動かしやすいです。
昨今のビンテージブームもあり、何となく一枚袖が良いように持ち上げられておりますが、バーバリーもアクアスキュータムもかつては三枚袖のコートを作っておりました。なので、どの袖にするかは、そのコートの目指す方向性によって、昔から使い分けられていたと思います。
メンズのコートで、ラグランコートは他のデザインのコートに比べて、既製品でも多く販売されておりますが、それでもオーダーする良さは十分あります。
ゆったりとしてシルエットを着るコートなので、サイズはチェスターコートやポロコートほど細かく指定する必要はありませんが、コート丈を制限なく調整できることは、オーダーならではの良さです。
そして、なんと言っても、どんな生地とも相性が良いコートなので、既製品には無い素材や色柄を選べることが最大のメリットで、お好みのラグランコートを手に入れるにはオーダーが一番です。
ラグランコートは、使用する生地次第で全く雰囲気の違うコートに仕上がりますので、いろいろな生地でオーダーしたコートをご紹介いたします。
ガンクラブチェックで仕立てたシングルラグランコート
クラシックな英国柄とラグランコートの相性は抜群です。ゆったりとしてボリューム感のあるコートをベルトで締めることで、きれいなドレープが出て、理想的なシルエットに仕上がっております。
フランネルのハウンドトゥースで仕立てたシングルラグランコート
コート用の生地よりも少し軽めのフランネルであれば、とても軽やかに仕上がります。スーツやジャケット生地は、コート生地よりも遥かに色柄の種類は豊富なので、選択肢が広がりますね。
ハリスツイードのヘリンボンで仕立てたシングルラグランコート
ザックリとしたヘビーウエイトのツイード生地を使用すれば、カントリー調のトラッドなコートに仕上がります。ツイードの寿命は長いので、着こむほどに味が増し、エイジングが楽しめます。
100%カシミヤのチャコールグレーで仕立てたダブルラグランコート
上質なカシミヤを使えば、一気にラグジュアリーなコートに仕上がります。生地もたっぷりと使っているので、とても暖かいコートでございます。
100%カシミヤのグレンチェックで仕立てたシングルラグランコート
衿の返り位置を下げてVゾーンを広げ、腰ポケットのデザインをパッチ&フラップに変更して、ベルトは付けずにリラックスした雰囲気に仕上げました。近年、ラグランコートに合うようなチェック柄のコート生地がとても増えています。
カジュアルなチェック柄のフランネルで仕立てたダブルラグランコート
ジャケットで使うようなチェック柄もセンスの良いコートに仕上がります。ワードローブに1着あると着回しの幅が広がります。
私も久しぶりにラグランコートをオーダーしました。ボリューム感のある生地で、今まで持っていない色が欲しかったので、DRAPERSのARCHIVE OVERCOATの中から、幅広ヘリンボンのグリーンを選びました。
ベルトは付けずに、ウエストは絞らずリラックスしたサイズ感で着ています。
目付が550g/mの重めの生地ですが、着心地はとても軽くて暖かいので、真冬には大活躍です。
ボリュームのあるストールとのコーディネートも良い感じです。
ラグランコートは、フランネルやツイード、カシミヤなどの生地以外にも、コットンやリネン、ポリエステル、ナイロンなどを使用したスプリングコートやレインコートとしてのオーダーでも人気がございます。
LORO PIANAのウール・ナイロンのRAIN SYSTEM®(撥水加工)の生地で仕立てたダブルラグランコート
LORO PIANAのウール・ナイロン・シルク・ポリウレタンのRAIN SYSTEM®(撥水加工)の生地で仕立てたシングルラグランコート
OLMETEXのタンブラー加工で自然なシワを施したコットン・ナイロンで仕立てたシングルラグランコート
BRITISH MILLERAINのピーチ加工を施したマイクロファイバー(ポリエステル)で仕立てたダブルラグランコート
私も、Cloth Ermenegildo Zegnaのポリエステル・シルクのブラウンで仕立てたシングルラグランコートを春や秋に着ております。しわにもなり難く、着ても手に持っても軽いので、かなり重宝しております。
スプリングコートの場合、裏地はほとんど付けず、毛芯や接着芯などの内蔵物もなるべく使用せずに、軽いアンコン大見返しで仕立てております。
他にも、いろいろな生地でオーダーいただいたラグランコートをGalleryページでご紹介しておりますので、ぜひ併せてご覧ください。
ということで、今回のコラムは、COLLABORATION STYLEのオーダーコートの中から、ビジネスでもカジュアルでも万能に着ていたけるシンプルで着心地の良いラグランコートについて、仕立てやデザインの特徴とこだわりのポイントをお伝えさせていただきました。
ショップには、いろいろな生地で仕立てたラグランコートをご用意しております。実際にコートをご試着いただきながら、素材やデザイン等のご相談を承りますので、オーダーをご検討されているお客様は、いつでもお気軽にお電話又はメールでお問い合わせください。
COLLABORATION STYLE 上原祥意