年々厳しさを増す日本の夏において、スーツを着ることにストレスを感じている方も多いと思います。今回は、高温多湿の環境の中でも、快適に、そしてスタイリッシュにスーツスタイルを楽しむための夏用のスーツ生地について、私が今までオーダーしてきた経験も踏まえてお伝えしたいと思います。
日本の夏は、昔から高温多湿が特徴ですが、近年は益々気温が上昇しております。そのような気候の中、スーツ生地には次のような性能が求められます。
・通気性が高く、湿気がこもらない
・肌離れが良く、汗をかいてもべたつきにくい
・軽量で、圧迫感を感じない
・見た目にも清涼感がある
このような特徴がある生地を選ぶことで、着ている本人も快適で、周りの人にも清潔感のある印象を与えられます。
夏用の生地には、伝統的な素材から技術の進歩によって生み出された新しい素材まで、オーダースーツ用の様々な生地がございます。
その中から代表的な生地とその特徴をご紹介させていただきます。
夏のメンズスーツ生地で最もシンプルかつ定番となるのは、トロピカル(Tropical)と呼ばれる平織りの生地です。クリアカットで、薄くさらっとしてハリのある風合いが特徴です。発色もきれいで、ひんやり感もあります。
シンプルで王道の夏のクラシックスーツをご検討の方に最適な生地です。
Fabric : DRAPERS LIGHT PANAMA
代表的な生地は、DRAPERSのLIGHT PANAMAやHARRISONSのMYSTIQUEなどがございます。どちらも何十年も作り続けられている定番素材です。また、強撚糸を使用し、よりドライタッチに仕上げたDRAPERSのASCOTの2PLYも人気が高いトロピカルウールです。
夏でも光沢があり、パリッとした仕立て映えのするスーツが好きな方には、モヘア混の生地が良いと思います。
ウールにモヘア(アンゴラ山羊の毛)をブレンドした生地は、吸湿発散性が高く、ドライタッチで肌にまとわりつきにくいのが特徴です。また、薄いながらもハリとコシがあり、モヘア特有の光沢による高級感もあります。
特に年配の方には、「夏のスーツ=モヘア」というイメージが浸透しているほどの伝統のある夏の定番生地です。時代は回ると言いますが、ここ数年は20代~30代のお客様からのオーダーも増えております。
Fabric : DRAPERS WOOL&MOHAIR
モヘア混ウールの代表的な生地は、DRAPERSのMOHAIR、STANDEVENのBRITHISH MOHAIRなど、イタリアや英国のマーチャントで定番のコレクションがございます。
また、DORMEUILのTONIKやSUPER BRIOなどの名作生地も有名で、洋服好きの方々にはモヘア好きの人が多い印象です。
尚、吸湿発散性が高い為、雨など水に濡れるとパンツのセンタークリースが取れやすいというデメリットもありますが、それゆえに付いたシワも取りやすいという特徴もございます。
フレスコ(Fresco)は、太く丈夫な強撚糸(撚りを多くした糸)を使い、メッシュ調に粗く織り上げた生地です。
風通しが抜群に良く、シワにもなり難いのが特徴です。太い糸を使用している為、他の夏用生地に比べて重さはありますが、その分仕立て映えのする生地です。
耐久性もあり、トラベルスーツとして出張にも重宝します。
Fabric : FOX BROTHERS FOX AIR
正式な素材(織り方)の名称はポーラですが、1907年に英国のMARTIN SONS&CO(マーティンソン)が開発した商品名のFRESCO®の方が有名となり、現在はフレスコという呼び名が一般的にはよく使われております。
ネクタイでもメッシュタイプ生地をフレスコと言います。
かつては、ドライでハードタッチの風合いが敬遠されることもありましたが、現在はとても人気のある生地でございます。
代表的な生地は、MARTIN SONS&COと同じグループとなったHARDY MINNISのFRESCO、WILLIAM HALSTEADのHIGH TWIST、FOX BROTHERSのFOX AIRなど英国製生地が本場です。
また、細番手のウールを使用することで、英国製のフレスコよりも滑らかで軽く、ドレープ感のあるLORO PIANAのZELANDER®Z-TWISTも人気が高い生地です。
さらには、日本の生地商社も負けてはおらず、英国や日本で織ったオリジナルのフレスコ生地は、色柄豊富でコストパフォーマンスがとても高いです。
夏でも高級感のあるエレガントなスーツをお好みの方にはシルク混の生地が良いと思います。
細番手のウールと極細のシルクをブレンドしたメンズスーツにおける夏の最高級生地は、細く強度の強いシルクをブレンドすることで、150g/m~220g/mという超軽量に仕上げた素材です。その軽さによる涼しさと上品な光沢が特徴です。
細番手の薄い生地なだけに縫製は難しいですが、長年提携している縫製工場の高い技術との相性も良く、素材の特徴を殺すことなく軽くソフトな着心地のスーツに仕上がります。
Fabric : LORO PIANA ROYAL WISH
COLLBORATION STYLEでも人気の高い代表的なウール・シルクの生地は、LORO PIANAのROYAL WISH®とCACCIOPPOLIのSUNDREAMでございます。![]()
リラックス感のあるスーツやカジュアルライクなセットアップスーツをご検討されている方には、ウール・リネンやウール・シルク・リネン(三者混)など、リネン(麻)をブレンドした軽く清涼感のある生地が良いと思います。
吸湿性や速乾性の高いリネンと弾力性がありソフトな風合いのウール、さらに滑らかな肌触りや吸湿・放湿性が高いシルクをブレンドすることで、それぞれの素材の良さを組み合わせた夏用の生地です。
100%リネンよりも薄く軽く仕上がり、シワにもなり難いので、リネンに興味がありながら今まであまり着たことのない方にも抵抗感が少なくお求めやすい素材です。
リネンやシルクのネップの糸使いにより、見た目にも清涼感があり、カットソーやスニーカーとのコーデの相性も良いです。
代表的な生地は、LORO PIANAのSUMMERTIMEやVITALE BARBERIS CANONICOのウール・リネンがございます。
・DRAPERSのASCOT 2PLYでオーダーいただいたスーツ
強撚糸で織られたトロピカルウールは、サラッとしていてシワにもなり難くビジネスシーンではとても使い易いスーツです。
さわやかな発色も特徴で清涼感があります。
・DRAPERSのウール・モヘアでオーダーいただいたスーツ
モヘア特有のハリコシによるパリッとした仕立て映えのするクラシックなスーツは、清潔感と清涼感を醸し出します。
シャリ感のあるドライタッチな風合いにより肌離れも良く、着心地の良いスーツに仕上がります。
・WILLIAM HALSTEADのハイツイストウールで仕立てたスーツ
私が2024年にPURPLE LABELのセカンドサンプルとして仕立てたブラウンのスーツです。糸が太くしっかりとした生地なので、汗かきの私でも型崩れせずに立体感が持続し、とても気に入っている1着です。
はじめは少し硬めに感じるかもしれませんが、着る回数を重ねるごとに織りが柔らかくなり、体に馴染んでいくのもフレスコの特徴です。
ハリがある生地なので、パンツのラインがきれいに出ます。
・WILLIAM HALSTEADの人気の色ブルーグレーでオーダーいただいたスーツ
丈夫でシワにもなり難く仕立て映えするので、スーツを着る回数が多いお客様にとても人気があります。
・LORO PIANAのROYAL WISHで仕立てたスーツ
私が2024年にオーダーした少しグリーンがかったブルーのバーズアイのスーツです。絶妙な色と光沢で、見るからに上質な生地でございます。
ジャケットもパンツも衝撃的な軽さで、とても涼しいです。
見た目にとても映えるスーツなので、ビジネス上のイベントや会食等にはよく着ていきます。
・ROYAL WISHのネイビーのシャークスキンでオーダーいただいたスーツ
色の深みと光沢が高級感を醸し出しております。
体にやさしくふんわりと包み込むようなソフトな風合いと軽さです。
・CACCIOPPOLIのSUNDREAMで仕立てたスーツ
こちらは、2019年にネイビーのピンストライプで仕立てたスーツです。
SUPER150'Sのウールに15%のシルクをブレンドしたSUNDREAMは、210g/mという衝撃的な軽さの薄い生地ですが、柔らかすぎず安定したクオリティの為、仕立て上がりがとてもきれいです。
クラシックで高級感のある大人のスーツに仕上がります。
・LORO PIANAのSUMMERTIMEで仕立てたスーツ
2025年にグリーンのストライプで仕立てたスーツです。
SUMMERTIMEでは通算3着目のスーツですが、サラッとして軽快でカジュアル感のある、本当に良く出来た素材で、今の時代にとても合っていると思います。
少し空気を含んだような生地は、250g/mという数字以上に軽く感じます。
三者混(ウール・シルク・リネン)ですが、ウールの割合が多い分、比較的シワにもなり難いのも特徴です。
・SUMMERTIMEのダークグリーンでオーダーいただいたスーツ
腰ポケットをアウトポケットにして、セットアップ風のカジュアルスーツに仕立てた1着です。
ジャケットとパンツ、それぞれ単品使いも考慮されオーダーいただきました。
ウール100%のトロピカルやシルク混ウールほどビジネスやフォーマル感は無く、コットンスーツやリネンスーツほどカジュアル度が強く無い、ビジネスとカジュアルのちょうど中間的なスーツです。
ポロシャツやレザースニーカーとのコーデもとても合いますね。
繊細できれいな色が多いので、カジュアルな中にも上品な着こなしを楽しめる生地です。
ということで、今回は年々厳しさを増す日本の夏において、少しでも快適にビジネスシーンを過ごす為のスーツ生地について、私が今までにオーダーしてきたスーツもご紹介しながら、それぞれの特徴や良さをお伝えさせていただきました。
ショップには、今回ご紹介しました生地を含め、色柄豊富にたくさんの夏用スーツ生地をご用意しております。また、夏の生地で仕立てたスーツも多数展示しておりますので、実際に手に取って比較しながらご覧いただけます。
夏のスーツ生地もいろいろな個性や特徴が有ります。お客様それぞれのお好みやご要望に合わせたご提案とサポートをさせていただきますので、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。
COLLABORATION STYLE 上原祥意